1年生が入学して一ヶ月、五月の中旬に喫煙予防講話を実施した。
その日の退勤時、玄関を出たところですれ違った1年生の女子生徒3名から「先生!私絶対タバコ吸わないよ!」と声をかけられた。感想文にも、「タバコに対する気持ち悪さがばいぞうした」とあった。短期的な効果ははっきりと感じられた。
正しい情報を提供し、判断は生徒にゆだねる。生徒に形成したい適切な判断・望ましい判断とは「喫煙しない」ことである。
学年集会の中で30分の講話、その後教室に戻って学習シートの記入という組み立てで行った。
講話で使用したコンテンツ(パワーポイント)、学習シートについては、こちらへ。コンテンツ問い合わせ
小学校中学校時代、タバコについて、学習をしたことがあるはずです。知っていること、覚えていることを先生に教えて下さい。(画像2)
発問1.タバコにはどんな害があるのですか。
ガンになる。病気になる。受動喫煙。火事。やけど。におい。汚れ。お金の無駄。以上の答えが予想できる。今回の実践では、「ガン」「脳卒中」と答えが出た。
スクリーンシェードを下げながら答えを示す。(画像3)
発問2.タバコを吸うとどんな病気になるのですか。
今回の実践では生徒からは一つも答えが得られなかった。
スクリーンシェードを下げながら答えを示す。
ガン(肺ガン、咽頭ガン、口腔ガン、など)、慢性閉塞性呼吸不全(COPD Chronic Obstructive Pulmonary Diseaseの略で、「慢性閉塞性肺疾患」)、バージャー病、歯周病、ニコチン依存症。こうした答えが考えられる。
以下に六つの病気について、説明する
(画像4)タバコを吸っている人の肺です。黒く汚れています。裏を見ると(画像5)。黒いところの内側にガンが育っていました。(画像6)ガンの部分は切り離してしまっています。黒いところが残っています。タールの漬け物になったように黒光りしています。(画像7)肺の手術の跡です。乳首の下から背中まで切るのです。
喉もガンになります(画像8)。丸い写真が、喉の中の写真です。白いところがガン組織。軟骨を食い破って、食道の方に飛び出ていました。喉仏から上を全部切り取らなければならなくなりました。声も出せない、においも分からない状態になってしまいました。肺の出口のところに穴を開けて、呼吸はこの穴からしています。
(画像9)この青年は、あごがありません。口腔ガンにかかり、手術で切り取ってしまったのです(画像10)。13歳で噛みタバコを始め17歳で口腔ガンになってしまいました。25歳までに30回も手術を受け、命を取り留めました。
(画像11)He wanted you to know. 彼は知ってもらいたかった。6月3日、ブライアンは死にました。妻のボビーと息子ブライアンがまくらもとで寝ずの看病を続けていました。ベッドの上に写真があります(画像12)。
3月29日、33歳のブライアン・リー・カーティスが2歳の息子ブライアンJr.を抱いています(画像13)。カーティスは、約2カ月後に死ぬのです。
ブライアン・カーティスは、13歳で喫煙し始めました。20年後に妻と子供を残して死んでしまうとは思いもせず。最後の数週間に、彼は若者に向けメッセージを始めました。命と引き替えのメッセージです。彼はタバコをやめることがどれほど困難かを知っていました。しかし、彼は自分がタバコのせいで死ぬと知ったとき、彼は少なくとも数人の子供を説得できると考えました。その最初のタバコを吸わないように。彼のこけた頬、しなびた身体を見たら、息ができないほど子どもたちを十分こわがらせるから。
タバコを吸う人の肺です(画像14)。黒くて、どろどろしています(画像15)。肺は本来、ピンク色をしたふかふかした柔らかい組織です(画像16)。ここにある肺胞という小さなボール状の組織で、酸素と二酸化炭素を交換しています。でも、こんなにドロドロしていると(画像17)、肺胞の働きがダメになって酸素と二酸化炭素の交換がうまくできません。ぜんそくと同じで、ヒーヒー、ヒューヒューと息をしても苦しいのです。慢性閉塞性肺疾患とか、慢性閉塞性呼吸不全といいます。COPDということもあります。
足の指の血管が詰まって腐ってしまいました(画像18)。タバコに含まれる毒物の影響で血管が狭く硬くなっていきます。原因は不明ですが、タバコを吸う人しかなりません。手とか足の指など、末端の組織でよく起こります。同じことが心臓でも起こります。心筋梗塞といいます。タバコのせいだとは誰も思っていないようです。無知とは恐ろしいことです。
この患者は手や足の指の血管がだんだんと詰まって腐ってしまい、ダメになったところを11回も手術して切断していきました(画像19)。でもタバコは辞められませんでした。爪が残っているのは右手の親指だけです。その後肺ガンになり、1年後になくなりました。タバコの恐ろしさを知らせるためなら協力します、とご家族のご了解を得て提供してもらった写真です。
タバコを吸う人の口の中です(画像20)。歯の裏側はタールが沈着して黒くなります。唇の色も黒っぽくて汚いけど、歯茎の色はピンクなのに青黒くて不健康そうな色ですね。歯茎の血管が収縮して血の流れが悪いのでこうなっています。両親がタバコを吸うご家庭では、タバコを吸わない子どもの歯茎もこんな色になってしまいます。
タバコを吸わない人の口の中(画像21)。きれいなピンク色ですね。
もっとひどくなると、歯にもタールが沈着して黒く汚れてきます(画像22)。手入れが悪いから虫歯もひどい。歯茎が黒いのが分かりますね。三十代の人です。タバコを吸わない人は、きれいです(画像23)。
歯周病の人は歯茎がやせて、下がってきてしまいます。歯と歯肉の間にできた隙間に嫌気性の細菌が住み着いてひどいにおいを出します(画像24)。この写真は歯肉の中に隠れた悪いところをきれいに取り除く手術をしているところです。タバコを吸っていたら、手術をしてもすぐに元に戻ってしまうので、禁煙を条件に行う手術です。
発問3.大人はどうしてこんなになるまでタバコを吸うんだろうね。理由がわかる人はいますか。
答えはニコチン中毒だからです。ニコチン中毒は誰にでも起こります。大人だけでなく、子どもにも(画像25)。君たちのような大きな子どもだけでなく、小さな子どもでもニコチン中毒になります(画像26)。男と女にも関係ありません。タバコを吸うとニコチン中毒になってしまうのです。
禁煙ポスターです。犬がタバコを吸っています(画像27)。
発問4.犬の飼い主は誰ですか。このポスターは何を言いたいのでしょう。教室に戻ったら、学習シートに書いてみましょう。
お酒に強い人弱い人がいるように、ニコチンにも強い人弱い人がいます。だから誰でも同じように中毒になるわけではありません。試しに吸ってみるというわけにはいきません。中毒になってしまったら大変だからです。ガンになっちゃうかも知れない、慢性閉塞性肺疾患になっちゃうかも知れない、バージャー病になっちゃうかも知れない、歯周病になっちゃうかも知れない。
今日は吸った本人に起こる害を中心にお話ししました。タバコについてはもっと知ってもらいたいと思っていることがあるのですが、今日はこれで終わります。
発問5.皆さんはタバコと関わりのない人生、タバコと仲良しの人生、どっちを選びますか。
生徒の感想文はこちらからどうぞ【感想】
平間敬文著『子供たちにタバコの真実を』かもがわ出版