TOSSランド:教師修業・実践交流>教師修業>片々の技術

話しかけてくる生徒には授業を続けつつ、穏やかな目線を送ろう

 生徒に悪意があろうとなかろうと、生徒は思いついたことを突然教師に話しかけてくる。返事をすると授業が脱線していく。こんな時、ぶれない授業をするためのささやかなコツを紹介する。
TOSS高校通信4号掲載論文、TOSS北海道推薦

佐々木基
TOSS北極星TOSS高校・専門学校ネットサークル
開設2005/2/5、

1.どんな場面か

 速さの授業で、ビデオを持ち込む。

説明1.これからスピードメーターが映るビデオを見てもらいます。
指示1.車のスピードメーターの針が、時間と共にどのように動くのか、グラフにします。

 準備に少しもたついたため、教室はややうるさくなっていた。

 興味を持って待っている生徒と、手遊び・私語の生徒が半々になっていた。

「では、どうぞ。」

 そう言って、ビデオの再生を始めた。

 高校生の中には自動車に強い興味を持つものがいる。いわゆるやんちゃな生徒だ。彼らが口々に何か言い始める。すでに大半の生徒は目を画面に向けている。数人、下を向いているものもいるが、友人の声につられ、ほぼ全員が画面を見る。

 「先生、車、何?」

 鈴木君が話しかけてくる。彼は廊下でも挨拶してくる生徒だ。授業中も積極的に参加する。悪気があってのことではない。

 私は、彼に目を合わせたが、取り合わない。

「グラフを書きます。」

 鈴木君はにこにこ話しかけてくる。

「先生の車、何?」

 私は鈴木君の目を見て、

「車のスピードメーターの針が、時間と共にどのように動くのか、グラフを書きます。」

と答えた。

 鈴木君はめげずに話しかけてくる。私の表情が穏やかだからだろう。

「先生、車、何乗ってるの?」

 私は鈴木君にはにっこり笑いかけ、全体を見回した。少しだけ、声を大きくして言った。

「車のスピードメーターの針が、時間と共にどのように動くのか、グラフを書きます。」

 鈴木君を見ると、にっこり笑い返してきた。そして黙ってグラフを書く作業を始めた。

 このやりとりの最中に、尻馬に乗ってくる生徒も現れなかった。却って、だんだん静かになっていった。

2.どんな言葉か

 生徒に悪意がない。真 面目な子のように取り組めないが、勉強しようという意欲はある。

 だから、注意はしない。無視もしない。認めていることを示す。

穏やかに見る

のである。

 そして、今何をするのか、ハッキリさせる。作業指示を繰り返すのである。余計なことは言わない。余計な言葉が入ると、指示にブレが出る。そこを生徒に突かれる。授業が崩れていくのである。

 だから、はじめから無駄のない言葉で指示をする。

何回言ってもぶれない言葉で指示をする。

 穏やかに淡々と3回繰り返せば生徒はわかる。

 途中何度も生徒の問いかけに答えそうになったが、我慢した。

 まぐれで出来た事実だった。しかし、「指示がぶれない」ということが少しだけわかった瞬間だった。