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私語を叱る

注意の言葉が多いと授業の雰囲気が悪くなる。生徒の気持ちがマイナスに向かう。悪循環の始まりである。授業中の私語がひどいとき、注意の言葉を削った指導をすることが出来た。今までにないよい反応が得られた。
TOSS高校通信8号掲載論文

佐々木基
TOSS北極星TOSS高校・専門学校ネットサークル
開設2005/2/11、

 11月のある日、担任学級での授業。いつもにまして生徒の私語がやかましかった。

 席の離れた3組6人の生徒がそれぞれに私語をしているのである。隣同士の私語も同じくらいある。周りの私語に負けないように話すので、騒然となっていた。

 はじめ、私は私語のすべてを無視した。

 顔のあがっている生徒、手の動く生徒と目を合わせつつ、授業を進めた。

 私も生徒もつられなかった。

 静かにしている生徒たちはだらけることなく板書を写していた。

 普段はよく使う「よけいなおしゃべりはしない」もこのときは一度も言わなかった。

 30分を過ぎたころ、なぜか私は我慢が出来なくなった。今までなら怒鳴った場面だった。

 このときはこう言った。

「きちんと座りなさい。手に持っている物を置きなさい」

私語がうるさかったと思う人は起立しなさい。

 反射的に立ち上がった生徒が4人いた。まるで雷に打たれたようだった。

「必要な言葉がありますね」

「申し訳ない」「ごめんなさい」

「それで」

「もう、しません」

言葉だけという感じがする。言葉に実感がない。

「出来ますね」

「頑張ります」

「大丈夫ですね」

 生徒が頷く。

「座りなさい」

そして、一人は寝てしまった。

一人は静かになった。

一人はかなり静かになった。

一人はしばらく静かだったが、またしゃべってしまった。

「T君。さっき頑張るって言ったよね」

「うん」

「頑張りなさい」

「はい」

 今度はT君の静かさが少し長持ちした。

 授業が終わるころ、

「俺、初めてノート全部書いた」

と言った。

 T君はしゃべっているか居眠りしているか、という生徒だ。何か注意すると、「何で俺ばっかり」と口答えすることもある。

 忘れ物も甚だしい。昼食を友達と食べるために鞄を持っていくと、授業の時には忘れてくるのだ。

 1時間全部のノートを書いたことはほとんどない。数学や国語の時間は担当教師から「何もしない」と言われている。

 そのT君が私語のうるささを指導されて反抗せず、ふてくされることもなく、かえってノートを書き終えたのである。

 なぜこうなったのか。

 それは、教師が叱る代わりに、生徒に

自己判断をさせた

からだと考える。

 今回は偶然得られた結果である。私語の相手の生徒を指導していない点が不十分だったし、起立した生徒の追い込み方も甘い。

 生徒の事実が得られるよう、教師修行につとめていきたい。