スキースクールのレッスンであろうと、学校のスキー授業であろうと、生徒は次のような希望を持って授業を受ける。少なくともレッスン受講生だった自分はそうだった。
1 | たくさん滑りたい |
2 | 上手になりたい |
3 | 楽しく滑りたい |
4 | 1人の練習では、できないことに挑戦したい |
スキーを指導する際の目標は
子どもたちに、「スキーは楽しい」と言う意識を持たせながら、ごく安全に滑る技術を習得させること
だと考えられる。(法則化体育授業研究会mlでの議論における廣川徹氏の発言からの転載である。)
最大の原則は
生徒をたくさん滑らせること
である。「たくさん滑る」は生徒の希望としても最大のものなのだ。
自分がスキースクールのレッスンに通っていた時、2時間のレッスン中、リフトに2回しか乗らないことがあった。そのスクールが利用するゲレンデはノンストップで降りてくると、リフト乗車から次のリフト乗車まで10分しかからない。この時はレッスン受講生は5人だった。単純に計算して、1人の受講生が滑走した時間は20分、残り時間のうちの1/5が各自が助言を受けた時間で20分である。つまり、20分滑るために20分話を聞いて、1時間20分待っていた。
待っている間は、「話が長い」とか「いつまでしゃべってるんだ」とか独り言を言ったり、まわりに同意を求めたりしている。身体が冷えてくるから飛んだり跳ねたり滑ったり登ったりする。ちっとも練習に集中できなかった。今何をするのか、何と言われたのか、忘れてしまっている。あとで振り返っても、つまらなかったことだけを覚えており、練習内容や助言内容はほとんど覚えていない。
一方、話をほとんどしない指導員もいる。リフト乗り場のそばで、グループ最後の人が滑り降りてくるのを待っている。その人が止まって、指導員が一言言ったら「はい、リフトに乗りましょう。」と移動する。独り言や文句を言っている暇がない。身体が冷えるどころか、身体が暖かくなるほどたくさん滑る。
少ない言葉はしっかり聞き取ろうとするし、記憶にも残る。
たくさん滑るから満足するし、僅かとは言え技術の進歩も自覚できる。
エピソード 2003/2/5 加藤真一氏からの報告昨日第1回のスキー学習がありました。私は3年生Bグループ19名を担当しました。 Bグループは、「山頂から安全に一人で滑っておりてくることができる」というレベルです。子どもに希望をとりました。 いざ、滑ってみると一人の子どもがほとんど滑れない状態なのです。(本人はその日の朝までAグループに行くといっていたのです)その子をCグループに行かせることができません。 もう一人、スピードがコントロールできなく、暴走してしまう子がいます。 しかし、Aグループに行ってもいいほどの上手な子どもが一人いました。 非常に不安定な太郎君(仮称)に対して、逆ハの字指導で滑らせました。合計7回すべりました。すべて逆ハの字ですべらせました。私は太郎君に付ききりです。 次に不安定な花子さん(仮称)には「とにかくゆっくりすべるんだよ」といい、花子さんの動きには注意していました。ところが花子さんは暴走します。転び方も危ないのです。そこで、太郎君の後ろで滑らせました。私が太郎君を逆ハの字で滑らせ、その後ろに花子さんがついてくるという格好です。 10時30分から始まって12時30分までで7回リフトに乗りました。 私が指導したのは 1、集合の仕方→止まっている人の下に着く。 2、親指に体重を乗せること これだけです。しかも1回だけです。あとは回数を滑らせました。 学習終了後、その他の子供達から意外な声を聞くことができました。 「今日のスキー学習、すごくおもしろかった」 「おれ、うまくなった」 「また、加藤先生のチームで滑りたい」 |
たくさん滑らせるには下記3つの方法がある。
1 | 複数(普通2人)を同時にスタートさせる[資料1](←クリックすると新しい窓が開きます。) |
2 | 1人ずつ次々にスタートさせる[資料2](←クリックすると新しい窓が開きます。) |
3 | トレーン(train=列車)で滑らせる[資料3](←クリックすると新しい窓が開きます。) |
これらのやり方でたくさん滑らせようとする時、指導員が最も気をつけることは余計な話をしないことである。個別指導のための話はまったくなくてもよい。滑走技術の解説や滑走方法の説明はすればするほど滑走時間が減る。指導員が話すことは「指示」であり、指示を理解しているか確認するための「発問」である。