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スキー指導の原則(2)

佐々木基
TOSSスキー指導研究会
開設2000/5/7、更新2003/3/22

1.指導の原則

 2番目の原則は

生徒を褒めること

 である。

 指導員は生徒を上手にしようとして、たくさんの助言をする。しかし助言の内容は欠点の指摘にとどまることが多い。例えば、指導員は「今の滑りはここがこうなっていた(身振りで示す)。」とだけ言う。少し上等の指導員は付け加えて目標の滑りを再確認する。「ここはこうする(身振りで示す)。」さらに上等の指導員は現在と目標の間をつなぐやり方を示す。「こうするとこうなると思いますよ(身振りで示す)。」

 自分がレッスンを受けていたとき、上記のような助言が多くなればなるほど内心に不満をため込んでいた。「どうすればそうできるんだよ。」などと思っているのである。出来ないことはそう簡単には出来るようにはならない。必要なのは練習量である。結局助言の多い指導では助言された内容は一つも覚えていない。つまらなかったこと、おもしろくなかったことだけはよく覚えている。

 言われた通り出来たときは何も言われない。ところが自分はそんなとき内心天狗になっている。「俺は出来るんだよ。」「うまいだろう。」

 レッスンを受けると楽しいと感じるときがあった。その指導員は、褒めるだけで、欠点は指摘しない。褒めることがないときは何も言わない。余計なことは言わずに、すぐ滑る。

 適切に「褒めること」は生徒を満足させる。しかも練習量の確保につながる。

2.指導方法

 生徒がよい滑りをしたときは褒めちぎる。例えば次のように言葉をかける。抑揚もはっきりつける。こぼれるばかりの笑顔で言う。

すばらしい
よし
うまい
合格
まる

 手袋をはめたままの手で拍手をする。ストック同士をぶつけて拍手をする。両手で大きな○を作る。あらゆる方法で褒める。

 本人の以前の滑りと比較して僅かでも上達が認められた時こそ、ここぞとばかり思い切り褒める。滑りが定着してきたとき褒める。滑りが安定してきたとき褒める。

 3回5回と繰り返し練習させ、それでも上達が認められないことがあるかもしれない。そんなときは「諦めず努力する姿勢」を褒める。そして「必ずうまくなる。」と言って励ます。

 しかし、実際の指導場面ではそう簡単に褒めることが出来ない。指示通り滑ることが出来ないからである。また、褒めるに値しないときに褒めてはいけない。そこで、指導員が気をつけることは、生徒の滑りが普通以下の時に何と言って言葉をかけるかである。例えば次のように言葉をかける。いずれも淡々と言う。

ええ、ええ、ええ
いいですよ
はーい

 難しいのはこれ以上の言葉かけをしないことである。欠点の指摘は絶対しない。かわりに「もう一度やってみましょう。」と言う。