パターン(3)は生徒に教師の模範演技を間近に真横から観察させたい時に用いる。生徒は何かを感じ取る。
応用パターン(3)は次のように行う。
1.【趣意説明】どんな滑り方をするか説明する。
2.【指示】どんな風に滑るか、指示をする。
3.【試技】生徒は指示されたやり方で、指示された地点(あるいは好きなところ)まで滑走する。
4.【模範演技】教師は模範演技をし、生徒の目の前を通り過ぎて、生徒の倍の距離(あるいは50mほど長い距離)を滑走して停止する。
5.【滑走開始の合図】教師は生徒に向かって滑走開始の合図を送る。待たせる時間が短くなるように配慮し、次々に合図を送る。
6.【試技】生徒は教師のいる地点まで滑走してくる。生徒は始めの指示と、教師の模範演技を参考に滑走してくる。
7.【評価】生徒の滑りを個別評定する。
観察させる運動要素は教師の滑走姿勢、滑走スピード、ターン弧の大きさ、角づけ(ずらし=スキッドの量)である。
生徒の習熟度に応じて事前に観察の観点を指示しておいても良いし、通過することだけを予告しても良いし、何も言わないで通過してしまっても良い。
私がレッスンを受けているときは、何も言わないで通過していくことが多かった。
普通のスキー指導では、教師は生徒の前で止まる。生徒は止まる様子を間近に観察している。しかし、応用パターン(3)は違う。滑走中の教師を間近に観察する。
教師がかっこよく目の前を通過していく。風切り音が聞こえるほど近い。シュプールが目の前に残る。生徒の受ける迫力が違う。
先生が目の前を通り過ぎていくとき、自分にはレッスンそっちのけで長い距離を滑って楽しんでいるように思われた。それがとても羨ましかった。
レッスンを受けているとき、そばの人と言い合ったものだ。
「来たぞ、来たぞ。」
「行くぞ、行くぞ。」
「行くかな。」
「きっと行くさ。」
「あー、行っちゃった。」
「いいなあ。」
日頃のレッスンで滑る距離は短いことが多いので、「好きなところまで行ってください」と言われても生徒は短い距離しか滑らないことが多い。「長い距離を(優雅に)滑ればとても楽しいのに。もっと長く滑りなさい。」と言外に訴えていると感じたのである。