滑走イメージを「基本パターン」の指導によってある程度形成できているとき、この指導パターンを組み合わせて行うと一層明確な滑走イメージの形成に効果がある。
基本パターンにはいくつかの弱点がある。
一つは模範演技をする指導者が生徒から遠ざかっていくので、演技が見えにくいこと。
もう一つは演技を追いかける視線が水平に移動するので、滑走ラインが把握できにくいこと。
特に斜度に変化がある場合、降雪時など、演技が完全に見えなくなる場合がある。
これに対し、応用パターン(1)は指導者が近づいてくるので模範演技が見やすい。
特に急斜面の下に広がる緩斜面で生徒が待っている場合、生徒は模範演技を見上げる形になる。視線が上から下に垂直に移動する。
生徒は指導者の模範演技と同時にシュプール(滑走あと)をはっきり観察できる。
とりわけターン弧の大きさ、ずらし(スキッド)の量を把握しやすい。課題に対する習熟度、地形を考慮し、積極的に活用したい指導パターンである。
指導の骨格は次の通り。
1.【趣意説明】どんな滑り方をするか説明する。
2.【指示】どんな風に滑るか、指示をする。
3.【試技】生徒が滑走する。
4.【模範演技】教師が模範演技を示す。
5.【評価】生徒の前に立ち、一言だけ、生徒の滑りを評価する。
基本パターンの指導から始める。例えば次のように行う。
指示1.
ブーツを雪の中にめり込ませるように板の真上から踏んづけてみましょう。
と言って模範演技をする。テンポよく合図を送り、次々に生徒試技をさせる。適切な評価語を与える。
全員の試技が終わったら、すぐ、パターン(1)の指導をする。指示の内容は同じ。
例えば、次のように言う。
指示2.
もう一度やってみましょう。
並びの順に
指示3.
○○さん、お好きなところまでどうぞ。
△△さん、どうぞ。
と、最後の人まで指示する。もちろん、適切な間隔をあけて、次々に滑走させる。
生徒試技が全員終わったら模範演技をする。生徒の前についたら「皆さん、よかったですよ。」と評価を与える。
実際には全員がよいはずはないが、余計なことを長々言わない。すぐ次の滑りに移る。
余計なことを言わないから生徒は良い滑走イメージを脳裏に焼き付けることができる。
「お好きなところまで」と指示した以上、どこまで滑るかは指示された生徒の判断である。10m滑って止まろうと、一気にリフト乗り場まで滑っていこうと、生徒に任せる。滑った距離についてコメントしてはならない。
生徒に任せることに不安があれば、どこまで滑るか、具体的に指示する。例えば、「あそこのリフトの支柱まで。」などである。
この指示は、スキーを楽しく練習する上で、非常に有効な指示である。
不安や緊張がある生徒はちょっと滑って止まる傾向がある。下手でも一生懸命練習しようという意欲のある生徒は長く滑る傾向がある。
教師が特に注目する生徒に先頭を滑らせ、どこまで滑るかで、楽しく練習に取り組んでいるか、わかるのである。
また、長く滑る生徒がいると、そうでない生徒は触発されるのである。