応用パターン(2)は次のようなときに用いると効果的である。
1.生徒の滑走姿勢を真横から見て確認したいとき、
2.誰にも聞かれずに個別指導したい生徒がいるとき、
「スキーの真上に立ち、垂直荷重が出来ているかどうか」を判断することは難しい技術である。このことを的確に判断することは「準指導員」の資格を持つ私にも難しい。
滑走する生徒を真横から観察すれば、このような前後のバランスは簡単に判断できる。
従って、前後のバランスが微妙にずれているのではないか、と感じる生徒がいる場合に、その確認のために使う。
こうすることによって、指導者の見る目=判断力が養われていく。生徒にとって直接の効果はない。長い目で見ると、指導者の判断力が向上することは生徒にとって有益である。
ある生徒への助言をまわりの生徒に聞かれたくない場合がある。
特定の生徒だけに特別な指示を与えたい場合である。遅れている生徒に対する助言の場合もあるし、進んでいる生徒に対する助言の場合もある。
みんなのいる前で、その生徒だけを取り上げて助言を与えれば目立つが、全員に個別指導を行うのである。だから、特別の生徒も目立つことはないし、全員が個別指導を受けることで満足するし、指導者も目的を達する。
指導の骨格は次のとおり。
1.【趣意説明】どんな滑り方をするか説明する。
2.【指示】どんな風に滑るか、指示をする。
3.【模範演技】教師が模範演技を示す。
4.【試技】生徒は教師の前を通り過ぎ、教師の倍の距離を滑走して止まる。
5.【模範演技】教師が模範演技を示し、生徒の前で止まる。
5.【評価】生徒の滑りを評定する。
指示は次のように出す。場合によって若干の違いがある。
指示1.先生はあそこまで滑って止まりますが、皆さんはずっと向こうのあそこまで滑って下さい。
指示2.合図をしたらスタートしてください。
指導者は、滑走距離、滑走時間とのバランスを考えて、次々にスタート合図を送る。
この場合、見る目を養うことも目的となるから、目の前を通過する生徒の姿勢を見て判断するだけではいけない。
前から見た姿勢と横から見た姿勢をつなげる作業を頭の中で行うこと。横から見てバランスを判断するのと同じ精度の判断が前から見ても出来るよう、3次元的に把握する訓練をするのである。
まず、基本パターンで指示をする。その際、合図をしてからスタートさせる。生徒が試技を終え、目の前に停止する。
助言が必要な生徒の場合、当然助言を与える。その場で模範演技をしたり、試技をさせたりしてもよい。個別指導を誰にも聞かれずに行うという計画的・意図的な指導である。大胆に、断定的に、短時間に指導する。
生徒の滑りを見て特別な個別指導が必要でないと判断した場合は次のようにいう。
指示1.今の感じ、いいですよ。その感じで下までどうぞ。
どちらの場合であっても、特別の個別指導を受けたと感じさせる言葉掛けをする。滑走する後ろ姿を見送ってから次のスタート合図を送る。