プルークボーゲンにはかなりの程度慣れている生徒が対象である。コの字に滑るイメージを持たせることで、誰でもナンチャッテ小回りが出来る。地域公開講座に参加した大人3名、中学2年2名、小学3年1名合計6名を対象に実践した報告である。
導入は緩斜面で行う。プルークスタンスか、パラレルスタンスか、はあまり問題ではない。練習を重ねていくうちにほぼパラレルスタンスになる。
説明1.小回りといってもいくつかの滑り方があります。直滑降のラインを2本イメージします。この2本のラインを横につないで滑るんですね。(雪上にストックで図を書いて説明する。)
説明2.では練習します。直滑降からスタートし、今までと同じように外足荷重の山周り(プルークボーゲンを2時間でパラレルターンにする指導)をしてすぐ停止します。
指示1.真似をしてやってみましょう。(1ターンだけ行う。)
緩斜面であるから、直滑降も落ち着いて出来るはずである。直滑降の姿勢をきちんと作らせてからスタートさせる。
山周りの大きさは気にしない。大きくなってもよい。外足荷重がきちんと出来ていればよい。慣れてくれば適切な大きさに調節することが出来る。
説明3.同じことを2回連続してやってみます。スキーが横向きになっているとき、一気に「えいっ!」と立ち上がって直滑降になります。そしてすぐ山周りをして、停止します。
指示2.真似をしてやってみましょう。(立ち上がるとき、「えいっ!」と言いながら2ターンだけ行う。)
余計なことを言わず、何度も繰り返す。直滑降、真横、直滑降、真横と滑ることに慣れさせる。
2ターン、4ターン、6ターン、10ターン以上、とだんだん滑走距離を長くする。トレーンで長い距離を滑ってもよい。
少し慣れたなと思われる頃、斜度によって、山周りの深さを調節することを説明する。
説明4.急斜面では、スキーを完全に横に向けます。どんどんスピードが出てしまいますからね。緩斜面ではスキーを完全に横に向けると、スキーは止まってしまいますから、少し斜めにします。とても緩い緩斜面では、スキーはほんの少し斜めになればいいのです。
急斜面や中斜面に行って、同じように練習してみる。
発問1.小回りと大回りの違いがなんだかわかりますか。
わからない場合がほとんどであるから、すぐに説明する。
説明5.小回りはおへそがいつも真下を向いています(その場で演示をする。)。大回りはおへそが滑走方向(スキーと同じ向き)を向きます。
指示3.おへそを常に下に向けて滑ってみましょう。
体がスキーと一緒に回転してしまう場合がとても多い。
生徒が必死な様子で、顔だけでも谷を向かせたい場合は、「先生の方を見て!」と声をかける。
もう少し余裕があると感じられる場合には、「おへそをこちらに向けて!」と声をかける。
言葉で指導するより、次のようなバリエーションを取り入れてたくさん滑らせる。
1.ストックを両手で水平に持つ
2.ストックを両手で垂直に持つ
3.ノーストックで両手を水平に広げる
説明5.小回りは「シュッ、シュッ」とリズミカルに楽しい感じで滑ります。リズムは上下動で作ります。立ち上がって直滑降になったときは、膝もピンと伸ばします。スキーが横を向いたときは、膝を曲げて小さくなります。
指示4.ではやってみましょう。
股関節はあまり曲げない。その場で演示をしてみせる。その場で、膝を中心とした上下動を練習させる。その上で滑らせる。
ひざの全く曲がらない場合、股関節が深く曲がりすぎる場合がでてくる。欠点を直そうとしない。リズム感のあることが大切なので、動作そのものは小さくても気にしない。
説明6.立ったときに「1」、しゃがんだときに「2」と言いながら、一定のリズムで滑ります。
指示5.ではやってみましょう。
小回りという滑りにとらわれ、無理矢理スキーを回そうとするケースが多い。そのため運動やリズムを忘れてしまいがちである。
滑りはまっすぐにままでよいのである。膝を中心とした上下動を一定のリズムで滑ることが大事である。
リズムだけに集中させる。リズムがよくなれば滑りもよくなる。
説明7.
リズムのテンポは人によって違います。「1,2,1,2,」という人もいるでしょうし、「1・・,2・・,1・・,2・・,」という人もいるでしょう。その結果、滑りの小さい人もいれば、大きな人もいます。自分のリズムとテンポで滑ります。
指示6.ではやってみましょう。
説明8.
急斜面では、スキーを横に向けたまま、真下にずれてスピードをコントロールして停止します。
指示7.はじめは横滑りをやってみましょう。
ごくごく短い横滑りから、長い横滑りまで、何度も練習する。腰を中心とした外傾を注意して練習する。
少し慣れたと思われたところで、小回りの練習をする。緩斜面の時と同じように、2ターン、4ターン、6ターン、10ターン以上、と少しずつ滑走距離を長くする。
説明9.慣れてきたら、横滑りの量でスピードをコントロールするのです。横滑りの量が少なければ、「シュッ、シュッ、」というシャープでかっこいい滑りになりますし、横滑りの量が多ければ「ザザー、ザザー」というゆっくりした安全な滑りになります。
指示8.各自の好みで滑ってみましょう。
滑走量さえ確保できていれば、ここまでの2時間の指導で、それなりの小回りになっている。今回の実践では、リフトに8本乗車した。